「アイの歌声を聴かせて」の公開に先駆けて少し調べて見ました。受賞作品「イヴの時間」、「サカサマのパテナ」の吉浦康裕監督作品です。
10月29日 「アイの歌声を聴かせて」が上映されます
吉浦康裕監督作品だと知り、見に行くことに決めました。
吉浦監督は「イヴの時間」「サカサマのパテナ」などの作品を手掛けており幾つかの賞(比較的マイナーな賞の様ですが)を受賞しています。
過去の作品にはその監督の特徴が実写映画、アニメーション映画ともに反映されるものです。
これらの過去作品はどんな作品なのでしょうか?
以前見た記憶を手繰り寄せつつ簡単にレビューしてみました。
「イヴの時間 劇場版」(2010年)ってどんな作品?
Gyao版は2008年-2009年の作品。劇場版は2010年公開。上のキャラクターは主人公リクオの家のハウスメイド、サミィさんです。一度「動作停止」された経験が「死」の恐怖としてトラウマになっている。つまりもはやヒトと変わらないと言える。
時代設定
時は未来、たぶん日本、”人間型ロボット(アンドロイド)が実用化されて間もない時代”
アンドロイドは人間と区別が付かないくらいまでの完成度に達している。区別するために頭上にリングを表示して無表情で人間に奉仕する。
超あらすじ(ネタバレほとんどなし)
主人公のリクオ(高校生)は家で所有するハウスロイド(アンドロイド)の行動記録に命令した覚えのない記録を見つける。不審に思ったリクオは友人のマサキと一緒にハウスロイド サミィのGPS記録をたどり、ついた先は「イヴの時間」という名の不思議な喫茶店だった。
この喫茶店の中では、「アンドロイドと人間は区別しない」ことをルールとしている。アンドロイドは人間と振る舞いから何から区別が付かない。リクオとマサキはそこにいるヒトへの好奇心から店に通うようになった。
ある時、サミィ(リクオのハウスロイド)と鉢合わせた。自分に黙って行動していたことに対しリクオはサミィに裏切られた気持ちになる。リクオはヒトビトと関わるうちに彼らに触れ心を開いていく。一方、マサキは過去のトラウマからアンドロイドに心を開いていくリクオ、そして「イヴの時間」から距離を置くようになる。
そんな二人をよそに「倫理委員会」の調査が「イヴの時間」にも及び出し始める。リクオやマサキ、「イヴの時間」はどうなるのでしょう。
ってな感じです。
感想
最初の方は、「イブの時間」を見つけそこで人々と触れ合う話が進みます。室内で話が進むので動きに乏しく少し盛り上がりに欠けるかも知れません。
(まあ、ストーリー全体を通じても派手な事件が起こる訳でもなく、アクションがある訳でないので少々平坦に進むきらいがあります)
しかし、終盤にかけてのアンドロイドととの心の触れ合いはとても良かった。
感動しました!
お勧め度合いは★4つ
※あくまで個人の見解です。
個人的にはまる部分があって結構楽しめました。
こんな方にお勧め
・アニメーション映画が好きな方
・ハートフルな物語が好きな方
・ロボット、アンドロイド関係が好きな方
・吉浦康裕監督作品が好きな方
・声優に好きな人がいる方
・アイザック・アシモフ作品に慣れ親しんだ方
逆にこんな方は苦手な作品かも
・バトル系アクションを期待してはだめ
・SFっぽいのは苦手という方(ただしSF要素は少ない)
・ロボットとか人にそっくりになるなんてある訳ないじゃんっていう人
声優さん
リクオ:福山潤さん
マサキ:野島健児さん
ナギ:佐藤利奈さん(なんといっても「とある魔術の禁書目録」の御坂美琴、最近だとヴァイオレット・エバーガーデンのリュカ、鬼滅の刃の産屋敷あまね、ARIAのアテナなど多数)
アキコ:ゆかな(なんといっても「フルメタルパニック」のテレサ・テスタロッサ、コードギアス C.C.他多数)
サミィ:田中理恵さん(何と言っても「ガールズ&パンツァー」の西住みほ、他多数)
かなりベテラン陣で固めています。安定、安心の声優陣。
ところでロボット三原則って?
作中にロボット三原則(ロボット工学三原則)という言葉がたびたび出てきます。
この原則はアイザック・アシモフの著作「われはロボット」で提唱されたものでその後のロボット、アンドロイド系の小説、映画、アニメ、漫画にかなり出てきます。最近のアニメだとViviでもたびたび出てきました。
ところで、SFファンは良くご存じだと思いますがこのロボット3原則ってどんな原則なんでしょうか?
第一条
ロボットは人間に危害を与えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
第二条
ロボットは人間に与えられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が第一条に反する場合は、この限りではない。
第三条
ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのない限り、自己を守らなければならない。
一見、単純な様で実は結構奥が深いのです。故アシモフ博士(博士号も持っており、ボストン大学の教授でもあった。名前から分かる通りロシア出身)は「ロボット」シリーズでこの三原則の矛盾を解き明かすような内容が出てくるのですが、「イヴの時間」でもロボット三原則にからむ言動がたびたび出てきており、作中のアンドロイドの行動原則になっています。
個人的にはそういったこだわりも興味深かったですね。(こんな人は少ないと思いますが・・・・)
惜しむらくは、ロボット三原則に絡む謎ときをストーリーに絡められると奥の深さが増すと思うのですが本筋である人とヒトとのふれあいがテーマでしょうから本筋から離れてしまう感じになってしまうかな?
尚、本ストーリーには全く関係ありませんが、アイザック・アシモフ、アーサー・C・クラーク、ロバート・A・ハインラインの3人を3大SF作家と呼びます。
私は子供の頃SFが大好きだったのでこの3人の作品はかなり読みました。
特にアシモフ作品(なんと500作品もあるらしいのでごく一部となるが)の代表作「ファウンデーション」シリーズは大好きな作品で「銀河帝国興亡史」のハードカバー本は未だに大事に持っています。
本作の主人公は、向坂リクオ少年ですが、実のところは「イヴの時間」のウエイトレス、ナギ(凪)なんですよね。
「サカサマのパテナ」ってどんな作品だろう?
世界背景
たぶん地球ではないどこかの星。「かつて、多くの罪人が空に落ちた」とされ、「空」を忌み嫌う世界・アイガ。
一方、地下世界の住人もいる。かつて大災害があり、多くの人が重力が逆転して「空」落ちた。生き残った人々は地下世界で生活する。また、重力の影響を受けなかった地上の住人もいる。地上の人と地下の人は以前は交流もあったが今はむしろ敵対している。地上は独裁国家によって思想教育を施されている。
超あらすじ(ねたばれほとんどなし)
この物語のヒロイン、パテマは地下世界の住人。行方不明の友人を探して地上に出てしまいフェンスに掴まっていた。手を離せば空に落ちてしまう。そして主人公の少年エイジは、さかさまになってフェンスにしがみつく少女・パテマに出会う。パテマをかくまったエイジは国家警察に追われる。そこに地下世界の青年ポルタが助けに入ったり、なんやかんやの末、この世界の秘密を知る。
お勧め度★3つ
さかさま世界ってのは、結構斬新だと思いました。大災害で重力崩壊したとしても、それが世界や地域でなく種族について回る理由をなんとなく説明して欲しい気がします。(こいった決め事には寛容なんですけどSFなら一応の理由付けが必要だと思いますので)
パテマは可愛いし、絵も綺麗だし動画も悪くない。斬新な設定だけにそれを生かした驚くような展開や結末があるとカタルシスなんですけどね。
半面、パテナは空に落ちないようにエイジにずっと抱き着く感じになります。この世界で外にいる時はこんな感じになるのでその辺りがこの話のキーになるかな。
こんな方にお勧め
・アニメーション映画が好きな方
・SFっぽい話が好きな方で割と世界観に寛容な方
・ボーイミーツガール系のストーリーが好きな方
・さかさま世界に興味がある方
・追いかけっこ系のはらはらするストーリーが好きな方
・吉浦監督作品が好きな方
・ずっとサカサマでくっついている二人を暖かく見てあげたい方
逆にこんな方には向かないかも
・多少のどたばたはあるがアクションではないのでアクションを期待する方
・本格SFを好む方、設定にこだわる方
世界観から作るのって結構大変ですよね。
しかし、さかさまな人と一緒に暮らすのって大変だろうな。
上記にも書きましたが、パテナは地上にいる時には何かにしがみついていないと「空」に「落ちて」しまいます。必然、パテナとエイジはくっつく機会が多くなります。
想像してみると何かにしがみついてないと空に落ちるという状況はかなりの恐怖でしがみつくのも必死になるというもの。
それを出会ったばかりの少年、少女がしなくてはならないんですからそれはそれで面白い話になりそうな気がしますよね。
「アイの歌声を聴かせて」はどんな内容?
「ポンコツAI、約束のうたを届けます」
ちらしのあおり文句
「ポンコツ”AI”とクラスメイトが織りなす、爽やかな友情と絆に包まれたエンターテインメントフィルムが誕生!」
最後にきっと笑顔になれるー。
チラシ掲載あらすじ
景部高校に転入してきた謎の美少女、シオン(cv土屋太鳳)は抜群の運動神経と天真爛漫な性格で学校の人気者になる。
実は試験中のAI(アンドロイド)。シオンはクラスでぼっちのサトミ(cv福原遥)の前で突然歌いだし思いも寄らない方法でサトミの幸せを叶えようとする。
サトミとその友達たちはシオンに振り回されながらもひたむきな姿とその歌声に心動かされていく。
しかしシオンがサトミのためにとったある行動から大騒動に巻き込まれてしまう。
ちょっぴりポンコツなAIとクラスメイトが織りなす、ハートフルエンターテインメント。
まとめると
・AI(アンドロイド)の美少女が転校して物語が始まる(学園ものの定番と言える)
・学園もの
・AI、主人公(女子)、クラスメイトが織りなすドタバタ劇
・爽やかな友情と絆が描かれる
・終盤に向けて何らかの騒動、事件に巻き込まれていく
この様な物語の様です。
エンターテインメントとして楽しめるアニメーション映画ではないでしょうか。
豪華なスタッフ、キャスト陣
原作・脚本・監督:吉浦康裕さん(これまでこのページで語ってきたので説明は不要ですよね)
共同脚本:大河内一楼さん(∀ガンダム、コードギアス反逆のルルーシュの脚本他)
キャラクター原案:紀伊カンナさん「海風のエトランゼ」の作者
キャラデザ:島村秀一さん(コードギアス亡国のアキト、のだめカンタービレ、ハチミツとクローバーなど)
シオン:土屋太鳳さん(「るそうに剣心-The final-などの女優さんですよね。声優も経験あり)
サトミ:福原遥さん(「映画 賭ケグルイ」などの女優さん。声優も経験あり)
トウマ:工藤阿須加さん(「ちょっと今から仕事やめてくる」などのタレントさん)
ゴッちゃん:興津和幸さん(声優経験たくさん)
メインの声優陣にタレント起用なのが少し気になります。映画の場合はこういったケースが多いし若手俳優は上手に声優もこなすので違和感はないとおもいますけど。
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